Harawata0008

大はし
東京都足立区千住3-46、03-3881-6050、16:30〜22:30、日祝休

 東京の三大煮込みと呼ばれるお店がある。森下の山利喜、月島の岸田、そしてここ北千住の大はしである。「名物に うまいものあり北千住 牛のにこみでわたる大橋」伊藤晴雨(画家)の狂歌だ。明治10年の創業で、はじめは千住大橋の袂に店を構えていたことから、大はしという店名なのだそうだ。
 お店に入ると長いコの字型にカウンターが設えてあり、その中をお店の人がスイスイと行き来できるようになっている。「あぁ牛丼屋はこれを真似したんだな」と思える合理的な造りだ。というよりも何よりも、ここは元々肉屋さんで、牛鍋や牛めしを出していた処だそうだから、間違いなく元祖である(笑)。現在のような酒場の形態になったのは戦後で、牛めしの具を煮込みとして出すようになったため、味付は味噌ではなく醤油であり、内臓ではなくカシラが使われているのだ。
 カウンターの奥には鉄の大鍋があり、4代目のご主人が注文に応じてそこから煮込みや豆腐をすくっている。鍋の上の柱には「千住名代 肉とうふ320円 牛にこみ320円」という品書きが掛かっている。牛にこみはその名のとおり皿に煮込みだけが盛られ、肉とうふはとうふ一丁に煮込みが半分くらい盛られてくる。この豆腐は特注だそうで、煮崩れることなくカシラと一緒に鉄鍋で長時間煮込まれていて、スープの染み具合が何ともいえない。だからだろうか、常連さんのほとんどは肉とうふを注文しているようだ。メニューにはないが、豆腐だけの注文もOKらしい。
 まずはビールと肉とうふを注文する。ビールは勿論大瓶である。故山口瞳先生が言われたとおり、大瓶を置いているのが正しい酒場なのである。煮込みは適度な歯ごたえとジンワリと醤油味が広がるグニュグニュ染み染みで、豆腐も染み染みハフハフである。そのグニュグニュとハフハフをビールで流し込めば、プハァ〜と言わずにはいられない。グニュグニュをお替りしたら、飲み物も梅割りが基本でしょう〜。ケミカルな焼酎も梅シロップでとてもマイルドになり、煮込みも梅割りもどんどん進んでしまう(^^; ここは煮込みだけではなく、なま物も揚げ物も何でもありなので、近くにいたら毎日のように寄り道してしまいそうなお店だ。(02.7.10)
 2003.3より改装のため一時閉店となっていたが、その後再開。

店構え

牛にこみ、、肉とうふ、梅割り