Harawata0021

やっちゃん
東京都中野区江古田1-9-9、03-3954-4997、17:30〜22:00、月木日祝休

 JR中野駅からバスに乗って蓮華寺下で降りると、住宅街の中にぽつんとひとつお店らしき建物が見える。そこを目指して歩くと、すぐに「やっちゃん」という名前の入った看板が目に入り、ほっと一息ついて中に入った。

 お店は厨房を囲むカウンターと、小上がりに数卓のテーブルがあり、まるで寿司屋のような造りになっている。ずいぶん新しいお店のようだが、髄分前から現在のお店の隣にあった「掘っ立て小屋」で商売をやっているのだそうだ。その辺りの事は、15年以上前のご主人やっちゃんの姿とともに、辻真須彦(辻バード)氏が焼鳥学入門で紹介している。
 さて、ビールと刺身の盛合せを注文すると、お約束のキャベツが出てくる。こういうお店で出てくるキャベツは、葉っぱを一枚ずつ剥いて食べるのは邪道である。切ってある一塊かその半分くらいをぐわしっと掴み、塩や胡麻油+塩をつけ、バリバリ音を立てながら食べるのがよろしい。「やっちゃん」では塩にもこだわりがあるらしく、今日付け合わされている塩は「Mgを多く含んだ甘い塩」なのだそうだ。日によって違うらしい(笑)。それをつけてバリバリ食べながらビールを飲み始めると、新鮮なナカミの刺身盛合せができてきた。
 奥さんから「生わさびは付いてますから、あとニンニク醤油か生姜醤油つけますか?」と聞かれたので、ニンニク醤油をお願いした。盛合せが出されると、やっちゃんから内容の説明がある。今日のお薦めはセンマイの上ミノだそうだ。牛の胃は、ミノ、センマイ、ハチノス、ギャラの4つだから、センマイの上ミノっていうのは第1胃と第2胃の結合部分なのだろうか?確かに外側はセンマイの灰色で、内側はミノのピンク色なのだが。。。まぁそれはそれとして、まずはそのセンマイの上ミノをわさび醤油でいただく。おぉっ!まるでサザエの刺身を食べているかのような、コリコリとした清々しい味わいだ。これは初めての体験。なんとも旨い!その他の部位も、あまりに鮮度が抜群なので、全部わさび醤油で食べてしまったくらい旨かった。

キャベツ、刺身盛合せ(上左から:タン・カルビ・生ハム、下左から:レバー・ガツ・センマイの上ミノ)

 やっちゃんの色々な話に反応していたら、徐々にトークが炸裂し始めた。豚耳と豚足を注文すると、「豚耳はまだできていない」とのこと。「そのかわり、この豚足はプリップリッで、そっちのお客さんのより2段階くらいいいぞ」って(^^; 常連さんは笑ってたからいいけど(^^; おっしゃるとおり豚足は味も食感も抜群で、出された酢味噌は使わず、これも全部キャベツの付け合せの塩で食べてしまった。
 そしてシロの炒め。これは塩コショウであっさりとシロとニンニクの芽とタマネギを炒めてるだけで、シロの新鮮さを強調するようにシンプルな味付けだ。
 「たくさん食べたきゃ、ちょっとずつでも作るから、何でも言ってみて」というお言葉に甘え、煮込みを半分で出してもらう。って、これでも十分一人前あるじゃん(^^; 白味噌を使ったこれまたシンプルな味付けは、シロ炒め同様、その新鮮さを堪能させるためのものだろう。

豚足、シロ炒め、煮込み
 カウンターに座った時から、目の前に置かれた出来立てのチャーシューが気になっていたので、それを注文しながら、仕込んできたフランスパンをやっちゃんに渡す。すると、あーら不思議、薄切りのチャーシューとガーリックトーストが目の前に(爆)。隣の夫婦が羨ましそうに見ていたので、ガーリックトーストをおすそ分けし、こちらはチャーシューをのせて齧りつく。こりゃいいわ(^^)v

チャーシュー、ガーリックトースト
 最後に、とどめの串焼きである。ナンコツ、シロ、オッパイ、シビレ、ホルモン(シマチョウ)を塩で焼いてもらう。やっちゃん曰く「シマチョウは消化液を落とさないで焼くのがコツ」だそうだ。シマ腸っていうのは大腸(テッチャン)だから、消化液ってギャラから出た消化液か?突っ込むと長そうなので止めとこう(^^;

串焼き(ナンコツ、シロ、オッパイ、シビレ、ホルモン)
 いやはや、やっちゃん恐るべしである。恐ろしいやっちゃんなら昔から知ってたけど、恐るべしやっちゃんには初めて会った(殴)。
 このお店のウリは、やっちゃんの言うとおり鮮度だ。味付けが単調だったり、テーブルに胡麻油がなかったりと、こうしたらいいのにと思うところはいくつかある。気さくなご主人で、お客の注文は全て叶えてくれるから、言えばやってくれるのかもしれない。しかし、ちょっとメニューを絞ってソフトの部分を整備した方が、やっちゃんもやたらお客に気を使わずに済み、それがやっちゃんとお客双方の利益になると思うのだが、どうだろうか。とは言え、間違いなくトップランクのお店であることに違いはない。(03.6.27)
 その後何度かお邪魔しているうちに、お客が美味しく食べようとするための要求は、大概の場合叶えてくれることが分かった。ある九州出身らしいお客さんが「柚子胡椒ある?」と聞いたら、やっちゃんは冷蔵庫を探して「あったあった」と出してきたのには驚いた。「旨いものを仕入れるのは俺の役目」、「好きな食べ方を言ってくれれば、そのとおりにやってあげるから」、「何を食べたいか言ってくれれば、一番旨く食べられる形で出すよ」、やっちゃんと話しているとこんな言葉が際限なく出てくる(笑)。こちらが「こんな風に食べたい」と言って、それがやっちゃんの意見と一致すると凄く嬉しそうな顔をしてくれる。やっちゃんは肉のプロだから、お客のレベルに合わせてセッションしてくれているのだ。そうと分かれば、こちらもアマチュアバンドマンもどき(^^;、良いセッションができるようアドリブを返していくことにしよう。

驚愕のネタケース(笑)

牛タン刺し、牛タンの煮込み盛り合わせ、カシラの煮込み