Harawata0048

ひら乃
神奈川県鎌倉市小町2-11-11、0467-25-0717、16:30〜22:00(土日は16:00〜)、木休

 鎌倉の小町通りにあるひら乃といえば、ほとんどの人は「あぁ、あの狭いカウンターで食べるラーメン屋さんね」と言うだろうが、さにあらず。行列のできる串焼き屋さんなのである。小町通りをしばらく歩くと、右手に明治乳業の牛乳屋さんが見えてくる。その先の路地に玉子焼きおざわの看板「→おざわ」が見えたところで右に曲がり、正面のお店からボヤでも出したような煙がモクモクと出ていれば、それがやきとりひら乃だ。左隣にも串揚げのひら乃があり、冒頭のラーメン屋さんとも関係があるという話を聞くし、全てが流行っているということは、「ひら乃」というのはすでに鎌倉のブランドと言えるのかも知れない。

 さて、開店前に待つ以外、すんなり入るのは難しいお店のようだ。現に私も休日の17:00に行って、入店できたのが18:10だったという経験がある。店内はカウンター15席程度のキャパで、焼き方のお兄さんが1人で黙々と串ものを焼いている。茶髪にピアスで、どう見ても若いイケメン兄さんなのだが、その仕事振りはすでに職人の域に達した感ありだ。席に座ってもすぐには注文できず、お兄さんが声をかけてくるまでは、じっと待っていなければいけない。そうでなくでも、20本程度の串がのった焼き台に向かうお兄さんの形相を見たら、声をかけられるような隙などは一切ないのだ(笑)。この辺は名店「埼玉屋」に近いものがある。*埼玉屋の社長のようなトークはないけど(^^;
 注文の声がかかったら、食べられるであろう本数を一気に伝えるべきである。平日で席が空いている時ならいざ知らず、混んでる時は次に注文できるタイミングがいつくるか分からないからだ。それと、焼き物以外も1品入れておくのがテクニックである。何しろ焼き台にのる串はせいぜい20本程度なので、自分のオーダーが焼き始められるのは、いつになるか分からない。焼き物以外はお母さんがすぐに出してくるので、それを摘みながら待てるという具合だ。

エシャロット、鳥たたき、ポテトサラダ
 串の種類はやきとんと焼き鳥が半々くらいで、お客さんの殆どがやきとん中心に注文を入れている。そしてタレよりも塩で注文する人が多い。ガラスケースにあるネタ一つ一つの色が本当に綺麗で、素人目に見てもその鮮度の良さが分かるので、塩で食べたくなる人が多いのも頷ける。突き出しに小梅が3個出てくるのだが、途中でそれを齧ると口の中にアクセントがつくので、串を全部塩で食べても飽きがこないのだ。ここまで計算された突き出しだったら脱帽である。

お通し(小梅)、レバー(タレ)、レバー(塩)

ナンコツ・カシラ・ハツ・バラ(塩)、シロ(塩)・タン・シロ(タレ)、カワ・バラ(タレ)
 鶏については是非つくねを食べて欲しい。紫蘇の入ったつねは早々に売切れてしまう逸品で、これ1本でビールを1本飲めてしまうくらいの味わい深さがある。その他の焼き物は、何といってもはんぺん。これを食べると「自分は海の人だ」という気持ちになってくるのだ(笑)。そして、お勘定の前には、忘れずにあがりで仕上げてもらいたい。ここではあがりと言っても、ネギを散らした鶏スープが出てくるのである。ちょっと塩が足りないかなと思うくらいの味付けだが、飲み終わると「これでいいのだ」と思わずにはいられない。
 ここは1本から焼いてくれるので、4本くらい摘んでお酒をきゅっと飲んで帰っていく、地元の粋なおじいさんも多い。小声で「ごちそうさん」と言って席を立つと、寡黙なお兄さんが「でぇー、ありてぇー」と返す。一度も目線を合わせるでもないのに、その絶妙な掛け合いは見ていてとても羨ましい(笑)。(04.5.1)

つくね、ヤゲン、ネギ

しいたけ、はんぺん、あがり(鶏スープ)