Harawata0063

蔦八
東京都大田区大森北1-35-8、03-3761-4310、17:00〜23:00、土日休

 JR大森駅の東口から南へ向かうと、すぐに昭和を感じさせる商店街となる。そのアーケードをJRのガードに沿って進むと、更にレトロな雰囲気の界隈になり、薄暗い路地から「煮込 蔦八」の灯りが現れる。

 縄暖簾をかき分けて引き戸を開けると、お店を囲むようにぐるりとカウンターが設えられており、左に小ぢんまりとしたテーブルが置かれている。カウンターの中には大きな鍋が鎮座し、グツグツとモツを煮込んで注文を待っている。鍋と一緒にカウンターの中にいるのは矍鑠とした老夫婦だ。お父さんは見た目頑固そうで、お母さんは話し好きという感じの、映画にでも出てきそうなコンビである。身なりも店内も小ざっぱりとした清潔感が漂い、田舎の実家に帰ったような肩肘の張らない穏やかな接客で迎えてくれるので、一見の客でも安心してカウンターに座ることができた。ビールと一緒に煮込みを玉子付で注文すると、お母さんが紐のついた栓抜きでシュポッとビールの栓を抜き、間髪をいれずにお父さんが白い大皿に盛った煮込みを出してくれる。このコンビネーションは40年位の歴史を感じさせるなぁ〜。そして、カウンターに棒の立った木の台が置かれ、プラスチックの札が棒に差し込まれた。これがお勘定の時に使われる訳だ。う〜ん、レトロで良い感じだ(笑)。煮込みはシロを主体に甘辛く醤油で煮込まれた江戸風で、ちょっと枯れた感じの味わいが老夫婦の存在とマッチしている。玉子はモツと一緒に煮込まれ、ホクホクとした完熟で、モツの枯れた感じと対照的にコクがあって旨い。

煮込みの大鍋とカウンターの品札/煮込み玉子入り
 次に鰯の煮つけを注文すると、オレンヂのプラスチックの札を置いて、お母さんが厨房に入っていく。しばらくして電子レンヂのチーンという音が鳴り、ぷくぷくの鰯にネギと生姜がのって現れた。「おまちどうさま」と鰯を置くと、オレンヂの札が棒に差し込まれた(笑)。鰯を丸かじりすると、味がしつこく染み込んでいないのに、骨まで柔らかく食べられる。これぞ下ごしらえの妙だろう。本当にしみじみとくつろげるお店である。(04.9.28)

鰯の煮付け