Harawata0020
鈴木屋
東京都港区白金3-9-8、03-3441-9898、17:00〜21:00、日祝休
白金高輪駅の3番出口を出てちょっと歩くと、昭和の風情が残る四の橋商店街に行き当たり、そこを中程まで進むとこ瀟洒なマンションが現れる。はたしてここに新しいモツの名店が入っていようとは誰も気が付くまい。かろうじて通りに面した窓にカウンターがついているのを見て、観察力の鋭い人が「焼き鳥屋さんかな?」と思う程度だろう。
間口は半間。曇りガラスの張った扉が人ひとり入れる程度に開いている。手前には10人程度が座れるカウンターがあり、奥に行くと4人掛けと2人掛けのテーブルが1卓ずつ設えられている。席が空いていれば非常にラッキーで、まずは可愛らしい奥さんのとても丁寧な誘導と接客で迎えられるのだ。
席に座ると、「なかみ」の各部位とそれぞれの「お勧めの味付」が書かれた、「もつやき談議」というメニューが目に入る。それを眺める前に、まずは飲み物と煮込みを人数分注文してしまうのが、鈴木屋を堪能する第一段階である。
煮込みといえば、味付けのベースは、古今東西味噌か醤油と相場は決まっている。しかし、鈴木屋の煮込みは塩ベースなのだ。初めて見た時は驚いたが、ひとくち食べてその旨さに思わず声を出してしまった。そして、ご飯のおかずのようにわしわしと食べ、ごくごくとスープを飲んでしまった。聞くところによれば、ここはもともとモツの卸をしていたお店で、店先でもモツを焼いて売っていたのだそうだ。したがって、肉は折紙つきの新鮮さゆえ、「煮込みを塩味で」なんていう芸当ができるという訳だ。具はシロが主体でハツモトなども使われている。これらがまったく臭みなく食べられるのには誠に恐れ入ってしまう。そんな煮込みゆえ、19時台になくなってしまう場合もあるので、座ってすぐに注文するという訳だ。
煮込みの旨さに気を取られている間にも、焼き物と刺身系の注文にもきっちり取りかかなければならない。
刺身は煮込みと一緒か、ビールを一口飲んで「ぷはぁ〜」とやった後に注文すればよい。レバ刺しは、赤みのあるツルンとしたもので、摺りゴマがふられてでてくる。味付けがつは、湯通しされたがつに、胡麻油ベースの下味がつけられている。ひとりのお客さんもたくさん来るので、煮込みにしても刺身類にしても食べやすい量になっているところがとても嬉しい。
焼き物は前述の「もつやき談議」に目を通し、部位と本数と味付を伝票に書いてお店の人に渡せばよい。そしてこの時にも、すぐになくなってしまう部位から注文するのがテクニックである。まずは、ひも(スタミナだれ)とつくねは押さえておきたい。煮込みでシロの旨さをこれでもかと思い知らされたが、焼き物として姿を変え、ニンニクの入った醤油ダレの衣を羽織ったひもは、また一段と小癪なまでの逸品になって現れる。またしても、ひとくち食べて唸らずにはいられなかった。つくねを注文すると、お店の人からピーマンとセットで食べるのを推奨される。やってみると、これがまたピタリとはまるから驚きだ。軟骨部分をたたいたつくねは、コリコリ感を残しながら肉汁もしっかりあり、それを生ピーマンが清涼感を持って受け止めているのだ。
鈴木屋では焼き方はご主人任せである。新鮮な材料ゆえに大体がミディアムで、つくねは外側だけカリカリにする。ひも、子袋、レバーはミディアムレアーで、それ自体のクニュッとした食感を楽しむことができる。
カウンターで唸っていると、ご主人から「色々な味でためしてみる?」と声をかけていただき、しびれを「塩としょう油で一本ずつ焼こうか?」との案に素直に応じた。いゃ、これが大正解。旨いの何のって、このひと串でビール3ガロンはいけてしまう(笑)。しびれをこれだけ旨いと思えたのは、鈴木屋が初めてかもしれない。一度「お任せ」でお願いして、どういう展開が広がるのか試してみたくなる。
ビールばかり3ガロンも飲む訳にはいかないので、飲み物のメニューを見ると「鈴木屋カクテル」というモノを見つけた。当店のオリジナルカクテルだそうだ。(そりゃぁオリジナルでしょう(^^;) 怪しい色をしたカクテルは、子供の頃風邪をひいた時に飲まされたシロップの味に似ている(笑)。
もつ焼きは1本120円。生ビールの大が600円。生グレープフルーツサワーは、グレープフルーツ半身が付いて400円。全てが良心的なお店である。(03.7.15)
メニュー(もつ焼き談議)
煮込み、レバ刺し、味付けがつ
ひも(スタミナだれ)、つくねとピーマン(ピーマンはひと串に4つ位付く)、しびれ(塩・しょう油)
レバー(塩)、がつ(しょう油)、はつ下(しょう油)
子袋(たれ)、子袋(塩)、わっぱ(しょう油)
ハラミ、牛はつ、ぺてん(塩)
はつ下(しょう油)、なんこつ(塩)、てっぽう(たれ)、チレ・てっぽう(塩、
なんこつ・たん・はつ(塩)、オリジナルカクテル