Harawata0061
蟻月
東京都渋谷区恵比寿2-9-5、03-5424-0656、18:00〜翌2:00(日祝〜24:00)、無休
渋谷がガキンチョの街になってしまってから久しいが、お隣の恵比寿は大人の空気が漂うエリアが残ってい。特に駅の東側から広尾に向かう界隈は、下町の風情と落ち着いた雰囲気のお店が融合し、おじさんたちはまだまだ安心して歩けるのである。
さて、そんな場所にもつ鍋屋さんができたという情報が入ってきた。開店から半年以上経っているから遅すぎるくらいなのだが、こういう情報を常に入手できる方法を知らないから仕方がない。そんな訳で、焦る気持ちを抑えながら、いざ出陣と相成ったのである。
一見すると家内制手工業でもやっていそうな細長い3階建のお店は、看板と提灯でようやくその存在が確認できる。
ドアを開けると、1階は2人客が座るようなカウンターで占められており、まさにオネーチャン連れのカップルが鍋をつついている。その後を通って2階に上がると、フローリングに数台のテーブルが置かれていて、程よい人数で鍋を囲めるようになっているので、おじさん達はそこにイソイソと座るのである。
まずは飲み物ということで生ビールを注文し、博多系の基本である酢もつと、レバ刺し、センマイ刺しでご機嫌を伺うことにする。当然のように出てきたのはヱビスビール。お通しが枝豆というのも非常に嬉しい(笑)。酢もつは博多の標準よりも「やや厚め短め」で、コリコリ感がとてもよく伝わってくる。鹿児島黒毛和牛りレバ刺しとセンマイ刺しは、まったりとさっぱりでそれぞれに個性があって旨い。そういえば、博多で「レバ刺しを胡麻油と塩で食べたい」と言ったら、「ウチのは新鮮だから醤油で食べてください」と言われたことがある。胡麻油って別に臭みを消すために使うのではないのだが、博多では標準仕様ではないらしい(^^; ここも標準がにんにくとわさび醤油だった。
ヱビスビール、酢もつ、レバ刺し
センマイ刺し
飲み物を焼酎に切り替えて大分心地よくなってきたところで鍋である。ここの鍋は、白のもつ鍋(みそ風味)・赤のもつ鍋(しょうゆ風味)・金のもつ鍋(ポン酢風味)・炎のもつ鍋(チゲ風味)の4種類があり、それぞれが一人前1200円という、ここら辺にしてはリーズナブル、博多に比べると4割高くらいの設定になっている。始めにお店の一番人気という白を注文してみた。これで2人前?というくらい大量の鍋が出てきたので驚いていると、「中は煮えてますので、ニラに熱が通ったら食べられます」と店員さんに促される。取り皿にとって食べようとした時、ん?!何か足りないんじゃないかと思ったら、唐辛子とか柚子胡椒がテーブルにないのだ。聞くと小皿に入れて持ってきてくれたが、最初からテーブルに置いてくれた方が良いと思うのだが・・・
さて、一口スープを飲んで「これって博多のやま中じゃん!」と知ってる人は思うはずだ(笑)。やま中よりもにんにくが強い感じだが、白味噌ベースのまろやかな味わいとニラの利かせ方はほとんど一緒と言って良いだろう。最後にちゃんぽん玉を入れると、なおいっそう似てくるのには思わず笑ってしまった。
お次は赤である。こちらはオーソドックスなもつ鍋で、ベースのスープが違うだけで具は一緒だ。オーソドックスなだけに、食べやすさという点では白より赤の方が万人受けするだろうし、最後はおじやで〆たくなるだろう。(04.9.1)
モツ自体は博多のもつ鍋らしく丸腸が使われており、その脂がスープに移ってコクを増している。キャベツの甘味はスープに丸みを与えているし、ササガキの牛蒡は歯応えを楽しめる役割を果たしている。もつ鍋というのは非常にシンプルな構成でいながら、充分完成された食べ物なのである。